易経が出自の言葉は意外と多いものです。
「乾坤一擲(けんこんいってき)の大事業」といえば、運命をかけて大事業をやること。いちかばちかの大勝負をやってみることを意味しますね。
乾坤(けんこん)とは、易の卦の乾と坤。 天と地。 陰と陽。さいころの奇数偶数の目の意。「一擲(いってき)」はさいころを一回だけ投げて勝負することを意味します。
北朝鮮はミサイル試射を通して、乾坤一擲の大勝負に出ました。結果は失敗でしたが、あれだけの国際的な猛非難の中でもやってのける。日本にとっては人命に関わる大問題で徹底して抗議すべき問題です。ただ、彼らの立場からすれば、国家の存亡の危機をかけた乾坤一擲の大勝負だったことに変わりはありません。
易経64卦の最初は乾為天(けんいてん)。二番目が坤為地(こんいち)。この二つの卦が易の核心とも言えます。
乾坤一擲(けんこんいってき)と同じ表現として、「一擲千金」「一六勝負」もあります。
三次元空間で言えば、乾が垂直、坤が水平。絶対的な垂直に対して永遠の水平面が交わると直角、90度になるわけです。完全な垂直と水平であれば、天地はズレがなく、安泰というわけです。
しかし、現実世界では、一生懸命、人間の眼で垂直と水平を交わらせても、角度がピッタリ90度になることはない。微妙にズレて、途中からうまくいかなくなることばかりです。治国においても同じです。絶対的な垂直軸となるべき国家の中心がしっかり立たないから問題が出てくるのです。
乾坤を使った表現で「乾端坤倪(けんたんこんげい)」というものもあります。天地の果てという意味。「倪」は限り。天の端、地の限りの意味です。
「坤」は音読みでコン、訓読みで「つち」、「ひつじさる」。意味はつち、大地、女性、南西の方角を意味します。風水では「未申(ひつじさる)」の方位といえば、坤です。
たとえば、「坤軸(こんじく)」といえば、昔、大地の中心をつらぬき、大地を支えていると想像された軸を言います。地軸です。
また、「坤徳(こんとく)」と言えば万物を育てる大地の恵み。 皇后の徳、 婦人が守るべき柔順の徳のことを言います。 「坤輿(こんよ)」といえば、大地を意味し、大地が万物をのせるのを輿(車)にたとえた言葉です。
私は海外に10年以上、滞在していて、日本という国を見てきましたが、易の64卦でたとえれば、日本は坤(こん)の国、坤為地(こんいち)の国と感じるようになりました。
歴史的に日本の神道は天照大神をはじめ、女性神が多い。女系天皇になったこともあり、受け身の「坤」です。日米安保に守られて、核兵器を持たず、他国からの攻撃をかわそうとしているのですからそうなります。米国や中国、北朝鮮、イスラエルのようなお国柄とは違います。エリザベス女王のいるかつての海軍国家、英国と似ている部分があります。
「柔よく剛を制す」という言葉がありますが、これは坤為地の真骨頂でしょう。日本は本来、北朝鮮のミサイルに対しても、こうならなければなりません。日本近海で備えたイージス艦やPAC3などは北朝鮮のミサイルに即座に対応して迎撃するという面では、坤為地の真骨頂となる軍事技術です。先制攻撃ではなく、迎撃システムですから。ただ、実際にミサイルが飛来した場合、正確に迎撃できるかどうか、実戦はなかったので、迎撃能力がどの程度か不透明です。
北朝鮮のミサイル発射が失敗だったことについて、時系列的に日本政府が各自治体に正確な情報を提供できなかったことが徐々に明らかになるにつれ、国防、危機管理の甘さが如実に出てきています。
このままでは、日本という国の「国柄」すら見えない。情けない状態です。
今こそ、日本にとって旋乾転坤 ( せんけんてんこん=国家の大勢を一新する)の時です。
乾=天を旋(めぐ)らし、坤=地を転ず。国家の面目を一新する天道的意義のある時と言えるでしょう。国家の情勢を一新することです。「旋」、「転」はともに根本から局面をひっくり返す意味で、「乾」は天、「坤」は地です。天地を一回転させる意味です。
出典は韓愈の「潮州刺史謝上表」です。論仏骨表で皇帝の逆鱗に触れて罪を被った韓愈が、潮州に左遷させられた際に上奏した一節が出典です。
潮州といえば、広東省潮州。私も何度か訪れました。広東省の中でも福建省に近く、香港の巨大財閥、長江実業の創業者である李嘉誠会長の出身地。潮州語が独自に発達し、地元独自の諺が発達していて教育熱心な土地柄です。潮州料理もアワビや高級カニなど高級食材を使い、非常に美味です。
ただ、韓愈が左遷された当時は僻地で生活の苦労もさぞかし大変だったことでしょう。
当時の皇帝に身を賭して上申する韓愈の心が国を動かすことになるのです。
東日本大震災で多大な犠牲を払った日本。地方政党が力を持ち始め、現政権下での選挙が行われれば、間違いなく政権は揺らぎ、変わっていくでしょう。その日本が旋乾転坤、一新されるべき時を迎えています。